夏といえばモンゴル人の頭に浮かぶのはナーダムです。
ナーダムとはモンゴル語で祭りという意味で、モンゴルの一番大きな夏祭りです。
毎年、革命記念日である7月11日から3日間にわたって開始されます。
その中心行事となるのは、競馬、弓矢、相撲の「エリーンゴルバン ナーダム」で、様々な世代の男達が、遊牧民としての誇りと名誉をかけて彼らの技を競う男の祭りです。
11日の開会式は、オリンピックの開会式のごとく、入場行進、マスゲーム、騎馬隊のパレードやショーなど盛り沢山です。
モンゴル相撲
モンゴル人の男女ともにモンゴル相撲は好きです。特に男性の方がモンゴル相撲が好きな人は多いです。モンゴルの21県から、512人の力士が参加し、トーナメント方で対戦します。
フィールドの芝生の上で戦うが、土俵はなく、時間制限もないので、とにかく勝負がつくのに時間がかかります。
モンゴル人の我慢強さと相撲の技を感じて、楽しめる1番でもあります。相撲は8回戦(ナイミーン・ダワー)が準決勝、9回戦(ユスィーン・ダワー)が決勝です。 ナーダムで勝ち残ると、ツォルと呼ばれる称号が与えられます。ナーダム祭で、1回優勝を果たすと、「アルスラン」(獅子)、2度優勝すると「アヴァル ガ」、5度目の優勝で、「ダルハン・アヴァルガ」と呼ばれるように なり、一度得た称号が落ちることはありません。力士の衣装は長袖で胸の開いた上衣である「ゾドグ」、ショータグと呼ばれるショートパンツ、先がそりかえったモンゴルブーツ(モン ゴルゴタル)、中央が塔のようにとがった帽子(ジャンジンマルガイ)を身に着けて戦います。
モンゴル相撲と並び、ナーダム祭のもうひとつ大切な楽しみが、競馬です。
競馬は2日間にわたってあり、1日3レース。2歳馬、3歳馬、4歳馬、6歳馬以上そして種馬だけと各クラスに分けて速さを競います。往復60kmのコース、1000頭近い数の馬が、音を立てて疾走する光景で行われます。
モンゴルの馬は背が低く、足が短いため、長距離を走るのに優れているといわれています。2歳馬は15キロから30キロ超まで、長距離を数百頭が競走します。 各レース、上位5頭を、「アイラグ」と呼び、その馬をたたえる詩句を吟じ、馬乳酒をかけて祝福します。また、レースの土ぼこりを浴びたり、勝った馬の汗を体につけると縁起がよいといわれています。モンゴルの競馬は、騎手が6歳~12歳の少年少女たちです。「馬上で育つ」といわれるモンゴル人の面目躍如ともいえるが、馬の負担を軽くし、スピードを出させるためでもあります。騎手はレースがスタートする前に励ますギーンゴーと呼ばれるメロディーを歌います。これは馬への合図でもあり、大草原にはここちのよい緊張感が広がります。競馬で一番最後に来た2歳馬には、「今年一番遅い馬であり、来年は一番早い馬になりなさいよ」という意味で賞が与えられます。
弓矢
ナーダム祭のもうひとつの競技は弓です。 弓を射るまでの距離は、男性75メートル、女性65メートル、17歳以下は男性が年齢×4メートル、女性は年齢×3メートルで計算します。弓の長さは 120センチメートル~170センチメートルで、竹の芯で作った弓を、鹿の角をにかわで張り合わせて強度を増し、両端をしらかばで加工しています。 矢は長さ約1m、白樺やヤナギ科の落葉樹などで作られ、矢の後ろに鷲などの羽根がついています。
矢尻には鹿の骨が使われており、的は牛や馬などの皮をなめ してつくったソルを積み上げて作ります。 形は円形で、高さ8cmぐらい。壁のように積み上げたものハナ(壁)・ソル、30個を2層24個、両脇に3ずつを積み上げたものをハサー・ソルといいま す。競技は個人戦と団体戦があり、個人戦は成人男性がハナ・ソル20矢、ハサー・ソル20矢の全部で40矢、女性はハナ・ソル20矢、ハサー・ソル16 矢の全部で36矢、17歳以下は男女ともハナ・ソル20矢を射て命中した数を競います。 的の後ろと手前3mに線があり、弓射る人の矢が的にあたった場合「オーハイ!」と声を上げて知らせます。観客も「的中!」「惜しい!」などと声をかけて楽しみます。
ナーダム祭りは年一度のモンゴルの多数民族が集まる大祭りですから、みんなが民族衣装を着て参加します。お祭りの名物料理であるホーショール(ひき肉を小麦粉の皮で包み、油で揚げた料理)を食べるのが習慣です。