馬頭琴は、チンギスハンの伝統を受け継ぐ騎馬民族モンゴル人の、象徴ともいえる楽器で、乗馬とこの楽器を幼い頃から一生懸命練習し、これらを上手にこなすようになって、一人前と見なされるようになります。日本では、馬頭琴は小学校2年生の国語の教科書で習う、〈スーホの白い馬〉でよく知られています。
殿様にだまされて捕らえられてしまったスーホの愛する白馬は、全身に矢を射られながらもスーホのもとへ逃げ帰ってきましたが、そこで息絶えてしまいます。ある日、悲しみにくれるスーホの夢の中に白馬が現れて、「私の体を使って楽器を作ってください。そうすれば、あなたといつも一緒にいられます…」と白馬が告げる感動の場面は、馬を愛し、馬と共に生きるモンゴル人ならではの民話です。

弓奏楽器の弦は、ガットやスチールを用いることが多いですが、馬頭琴の弦は4度または5度に調弦された馬尾の毛を用いています。高音弦は雌馬の尾105本、低音弦は雄馬の尾130本程度を束ねたものであります。モンゴル語でモリンホールと言い、直訳すると「馬の弦楽器」です。モンゴル人は遊牧民族だからこそ馬を家族のように愛するため、馬頭琴は深い愛着のある特別な楽器です。
馬頭琴の持つたった2本の弦を用いた演奏方法も独特で、下から弦を押し上げるようにして音階を作るのですが、奏でるのは音楽だけではなく、動物の鳴き声や風の音などモンゴルの大自然が生みだすさまざまな音を表現できるのが最大の魅力でございます。